技術者的視点からは、悪い、イラッとくる

自民と民主の法案合意で落ち着いた(とは言え、よいものとは個人的には思っていない)青少年ネット規制だが、民主党案の概要が出たときにイラッときた理由がようやく分かった*1。それでちょっと口調がきつくなっていたわけだ。ま、あれはあれで、楠さんから突っ込んでもらうという大ボーナス*2をもらえたので、よかったとは思っている。

以前から、何か問題があったときにまずシステム(組織や体制や規則など)で解決しよう、というやり方が気に入らなかった。政治でもそうだし、職場でもそういうことがよくある。もちろんシステムは問題解決のための重要で役に立つ手段だ。が、何でもシステムに訴えようとする風潮は、そのうち「システムさえ作れば何とかなる」という考え方につながっていく。個人は、作られたシステムに従えばよく、状況を改善しようという意欲は必要なくなる。これで問題解決がうまくいったのを見たことがない。

そして、システムを作りたがる人は、自分で問題を解決しようとしないことが多い。システムによって動かされる誰かに、実際の問題解決を押しつけるのだ。

フィルタリングの問題を最終的に解決するのは技術者だ。法律は、立法者は、ただ「こうあるべし」とだけ言い、その問題解決に努力しない。言ってみれば、彼らはただ「こうあってほしい」と願うだけの立場、あるいは「こうしてくれ」と親にせがむ子と同じ立場にいる。それが政府であり、政党であり、その後ろにいるこのような法案に賛成する人々だ。

わかった、では技術者はそれを叶えるために努力しよう。しかし!そうであるなら、技術者が取り得る手段を潰すような規定を法に入れるんじゃない。技術的解決法なんて無数にある。特定の手段で解決せよなどと、なぜ実際に問題解決をしない人間、その分野について詳しく知らない人間が言えるのか。*3

技術者は損だ。技術者になんかならず、技術者を使う人間になれ。政治家でもいい。管理職でもいい。法律家でもいい。ただの客でもいい。でも、技術者はやめた方がいい。使われるだけだ。技術的な問題解決法を創造する愉しみがあるなんて嘘だ。そこに自由などない。

……こんなメッセージを若者に伝えたくないよ。でも、自民民主法案にもある規定―PCメーカーにフィルタリングソフトのプリインストールを義務づける*4―からは、やっぱりそう言うしかないでしょ。うちの技術者の卵たちは「わけわかんねぇ」と洟も引っ掛けなかったけど、法律になったらそれに縛られるんだから。

追記:なんか妙にネガティブな結びになってしまったので追記しとくと、要は技術のことは技術者に任せるような立法をしてほしい、ということです。

*1:ここでイラッときてます(笑)→技術に無知な人間がネットを規制する法律を作るんじゃない - DMZ: 非武装地帯

*2:お互い様だよ/ネット政党への期待 - 雑種路線でいこう。お返事もしてます→お互い様の方がいいのです - DMZ: 非武装地帯

*3:念のため書いとくけど、立法の努力を否定してるわけじゃないですよ。議員さんたちが苦労しているのは知っているつもりです。でも法律に縛られる人間がいる以上、努力賞ではダメだと思うのです。

*4:青少年ネット規制法案、国の関与なしで与野党合意 - ITmedia NEWS