生きることの意味

生きることに意味はあるか。自分が生きていることの意味は何か。これはとても難しい問題です。生きることについて本気で考える人は誰でも、この問題にぶち当たる。そして悩む。

生きていることに意味があるだろうかと疑ったり、意味がないように感じたりすると、生きていることがつらくなったり、無気力になったりします。生きることは大変なこと。だから、その大変さとつり合うだけの意味とか目的がないと、やっぱりきつくなるときがある。ただ単にその場しのぎの楽しさがあるだけでは、なかなかやっていけない。あまり楽しいこともないときには、さらにそう感じます。

そういうとき、いったい自分は何のために生きているんだろう、と誰でも思うものです。生きることの意味がわかれば、もっと力が出るのに…

ではちょっと、顔を上げてみましょう。頭の中でぐるぐる回るのは少しお休みにして。そして、ほかの人を見てみませんか。自分の身の回りにいる人や、テレビで見る人など。

…いろいろな人がいますね。生きることの意味なんて真剣に考えず、いい加減に生きているように見える人もいます。でも、中にはとても元気で、活動的な人がいませんか。彼らは何を考えて生きているのでしょうか。生きることの意味を知っているのでしょうか。

「あなたが生きることの意味は何ですか?」って聞いてみたいですね。聞けるなら聞いてみてもいいでしょう。きっとこんな答えが返ってくると思います。

  • 「ひとことでは言えないなぁ」
  • 「あんまり考えたことがない」
  • 「つまらん質問だ」
  • 「(詳しく説明してくれる)」

そして、答えは人によって違うでしょう。

質問を変えてみましょう。「あなたは、自分が生きることに意味があると思いますか?」と聞いてみる。すると、きっと例外なく「はい」「もちろん」「当然だ」という答えが返ってくると思います。

これはどういうことか。

人類に共通の「生きる意味」があるわけではなくて、生きることの意味は人によって違うのです。いや、もっと正確に言いましょう。人が、自分が生きる意味だと思うことは、人によって違うのです。それどころか、生きる意味をあまり意識していない人もいる。だというのに、元気で活動的な人はみんな「自分が生きることには意味がある」と感じている。なんでこんなことになるのでしょう。

ここで発想の転換が必要になります!

あなたはもしかしたら、こう考えていませんか。まず生きる意味が見つかる。そうすると生きることが有意義であると感じられ、それによってやる気がでて、元気に行動できる、と。

それは、順序が違うのです。

正しい順序はこうです。まずあなたが何らかの行動をはじめる。しばらくすると、その行動を続けていたい気分になる。だんだんその行動が有意義に感じられてきます。さらに続けていると、その行動をすることの中に、自分が生きる意味があるように感じられてくる。そして何年もたつ間に、その行動が自分にとって何であるかが分かり、それを自分の「生きる意味」として位置づけられるようになる。つまり最終的にその行動に「生きる意味」を与えるのはあなた自身なのです。

信じられない? 野球のイチロー選手のことを考えてみましょう。彼が子供で野球をはじめようというとき、そこに生きる意味を見つけたでしょうか。多分そんなことはありませんよね。もしも生きる意味を見つけようとして深く考えたら、野球なんてこの世になくても死なないんだから生きる意味ほどの価値はない、という結論になったかもしれません。でも今、きっと彼は自分の生きる意味を野球に見つけている。そしてそれは実際に生きる意味であるだけの価値があると、私たちも知っています。

同じような例は、音楽演奏家やさまざまな芸術家の中にも見つかるでしょう。

人間の普段の社会生活では、まず考え、それを行動にうつす、というやり方をすることが多いです。だから、つい、「行動とは考えの結果である」と思いがちです。でも脳も人間の体のひとつの器官にすぎないので、行動から逆に脳が影響を受けることもある。体を動かすと気分が爽快になる、などはよく言われることですよね。実はそれ以上に、脳は行動から影響をうけるのです。気分だけでなく、思考も、考え方ですら、影響を受けます。

では元の質問に戻りましょう。「生きることに意味はあるか?」それは、あなたが何か行動することによって意味を感じられるなら、意味があることになります。「自分が生きることの意味は何か?」それはあなたが行動する中で見つけていくものです。

もうやることは分かりましたね。頭の中でぐるぐる回っていても、生きる意味は見つかりません。生きる意味を感じることもできない。生きる意味を見つけるには、何か「自分の人生にとって、意味がありそうな行動」をまずは始めてみて、そしてそれを続けることです。最初はこんなことやっても意味ない、と感じるでしょう。でも続けるのです。そうすればそのうち意味が感じられるようになります。結果をすぐに得ようと思ってはいけません。人生とは、時間そのものなのですから。ゆっくり、あせらず、そしてあきらめず。

頭では分かっても、それでも投げ出したくなるときがあるかも知れない。そんなときのために、この言葉をお伝えしましょう*1。私の好きな言葉です。

人生に意味があるかどうかは分からない。でも私は、生きている限り、人生に意味がある方に賭ける。

さあ、一緒に、人生に意味を与える旅をはじめませんか。

*1:書名は忘れたけど、加藤諦三さんの本にあった言葉だと思います。