筋論を言えば

特許の目的が「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」(特許法第1条)であるならば、ソフトウェア特許を認める際にはソースコードの公開を義務づけるのが筋だろう。枠組みや方式だけを見せられても「利用」はできない。難しいのは実装なのだから。

しかし、ソフトウェアはコピーが容易だ。しかも商用ソフトウェアの利用許諾にはだいたいリバースエンジニアリングの禁止が含まれている。ソースコードが公開されるなら、特許料を払わない違法な利用が、普通の「もの」特許よりも多くなることは想像がつく。そうすると「保護」の方が成り立たない。

そんなわけで、私は今のところ、ソフトウェアは特許にそぐわないと考えている。「もの」と違い、複製コストがゼロであることが原因だろう。これは悪いことではなく、情報化の本質のはずである*1。ソフトウェアはすでに著作物として保護されている。それが作成者の権利と公益とのバランスのいい落としどころなのではないかと思う。

…などと書いていて、昔、UNIX のセットユーザ ID の特許の話を聞いてどうも腑に落ちなかったことを思い出した。

*1:情報の複製コストがゼロであることが情報化の本質、ってのは誰の言葉だったっけ?