こういう特許を出す仕組みは問題だ
国内シェア90%というWWWフィルタリングソフトがあるそうだ。
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i-フィルター。調べてみると、特許を取っているらしい。
特許電子図書館で内容を見ることができる。
http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl
「特許・実用新案検索」から「1 特許・実用新案公報DB」を選び、「文献種別」に「B」(特許)を、文献番号に「3605343」を入れると表示される。
さて、この内容を、特許としてよいのだろうか。
請求項はいずれも、ソフトウェア動作の枠組みについて述べている。しかし本気でWWWフィルタリングを考えたことのある研究者なら、このような枠組みだけならすぐに思いつく。難しいのは、ソフトウェア動作の枠組みを考案することでなく、この仕組みで言えば、どうやってアクセス許可サイトと禁止サイトの一覧を作成するか、またいかに禁止語データベースと有益語データベースを構築するか、そしてページ内に現れる語の頻度からどうやってページの閲覧可否を判定するか、そのアルゴリズムを考案すること。つまり、動作の実現方法を考案することである。
請求項では、これらの重要な点を明らかにしていない。これはまるで、青色LEDの特許の請求項に、「青色に発光する素子を利用して発光ダイオードを製造する」とだけ書いた特許が認められているようなものだ。
特許は、誰も思いつかないような技術や開発が困難な技術を公開することの対価として、独占権を与えるもののはずだと思ったのだが。
問題はもうひとつある。この枠組み自体に特許を与えてしまうと、最も難しいところであるリストやデータベース構築、判定アルゴリズムの研究開発が阻害されることだ。そのような研究開発の成果を実用化する際には必ずこの特許に触れることになり、研究開発のコストが回収できるか否かの予測が立てられない。実体のある「もの」と違い、ソフトウェアにおいては、ひとつの目的に対する解法は無限にある。このフィルタリングの枠組みを実現する、無限にある解法の開発を、たった一者の特許で阻害してもよいのか。
現在の特許制度では、これは特許になるのだろう。無効審判も、請求項に書かれたそのものが論文などで見つからない限り難しいだろう。
特許制度はいわば一種のゲームのようなもので、この会社もそのルールに則ってフェアに特許を取得している。製品化もして社会に貢献している。素晴らしいことだと思う。
しかし、このようなソフトウェア特許は、それに関連する技術の研究開発や、それを実用化しようとするビジネスを間違いなく阻害すると思う。特許庁にはそこのところを考えてもらいたい。